2006年07月24日

ひとりぶらり中伊豆【文学的な霧雨の日に】

旅の始まりはやっぱり雨なわけで…。724i1.JPG

ここ1年のひとり旅は、すべて雨のスタートです。ハイ、100%です。
たぶん、私は雨の星の下にに生まれたのです。誰ですかあめおんなってストレートなこと言ってるのは。

行き先を中伊豆にしたのは、井上靖の自伝的小説“しろばんば”の世界を見てみたかったから。
初めて読んだのは中学の国語の教科書(抜粋)で、その時は「大正のクソガキの話なんてつまんないや」という印象でした。(笑)
井上靖の本を1冊読んで感想文を提出せよという宿題が出て、ママに頼んでしろばんばを買ってもらい、しかたなーく読んだもののやっぱりつまらなくて、長いこと本棚の奥に眠っていたのでした。
それから十数年後ですよ、再びページをめくったのは。
引越しの際、古本屋に出す前に一度目を通しておこうと思って手に取ったら、意外にも登場人物がよく見えてきておもしろく、ハマってしまったのです。
つまらなかったのは私のほうなのでした。
すぐに続巻を買い求め、伊豆のハナタレクソガキだった洪作(モデルは作者本人)が大学を出て新聞記者になるまで完全読破。
ようやく私にも読み頃がやってきたのでした。これでやっと中卒になれました。

舞台は旧天城湯ヶ島町
“あまぎゆがしま”という漢字の並びが風情があってステキ。
修善寺からバスで向かう途中には“さがさわ橋”“青羽根”“門野原”など作中にも度々登場する地名が出てきて、「あぁ、洪作はここを馬車で通ったのだなぁ」と早くも感無量。

724inotaku.JPG 井上靖邸跡

ここに洪作とおぬい婆さんが暮らした屋敷があったのです。
石垣などはおそらく当時のものでしょう。作中にも出てきます。
寝食をした土蔵のあった場所にはよく手入れされた花壇が置かれ、大切にされているようでした。

おまえ洪作だろう? 724kosaku.JPG

724ino1.JPG 724inosui.JPG

邸宅跡を出て少し歩いてみると、すぐ近くに金物屋が。
作中にも金物屋が出てきたけどまさかね、今もあるわけないよねなんて思ったのですが、そのまさかなのでした。そこが金物屋の幸夫んちなのでした!
その向かいには、なまこ壁の屋敷。
おいおいまさかここも?と思った通り、そこは洪作の本家である“上の家”であり、その向かいは子供たちがよく遊んだという営林署であり、その裏は小学校であり。
作中の街の一角は、大正初期も今も同じ場所にあるのでした!
なんてすばらしい。カンゲキ。

724inoiti.JPG その一角。左は営林署。

読んだ時に感じたほど街が大きくなかったことに驚き。
私が大人の目線しか持っていなかったからでしょう。
実際の環境は本当に“街の一角”なわけで、やはり子供の行動範囲をもとに書かれた小説なのだと、歩いてみてわかりました。

近くの天城温泉会館には、しろばんばに関する展示が。

当時の街の様子。やっぱり重なる。 724inotizu.JPG

724karee.JPG おぬい婆さんのライスカレー!

うーん、こういう手書きの展示いいなぁ。このレシピで作ってみよう。
「土蔵で食べたおぬい婆さんのライスカレーこそ本物のライスカレーであった」と作者は後に記しています。
この時代にライスカレーとはかなりハイカラだったのでは。大根が入るのね。
おぬい婆さんは歯が悪かったので、野菜は飲み込みやすいようにすべてみじん切りです。

昭和の森会館に残された旧邸も見学したかったのですが、残念ながら時間もなし。湯道や西平の湯も行きたかったな。
天城湯ヶ島はシロバンビストにはかなり魅力的な街でした。次は1泊で来よう。

天城峠へ。天城越えです。 724amab.JPG

724suisyou.JPG バスを降りたら踊り子街道へ。 

井上センセイの次は川端センセイ、「伊豆の踊り子」のあの隧道を目指して半舗装のゆるやかな道を30分ほど登ります。沢のせせらぎを聞きながら。
平日とは言え夏休みだしハイカーも少しはいるだろうと思っていたのですが、歩いている人は誰もいなーい!だって、小雨でガスぎみだしぃ。
ヒグラシが声を合わせて鳴いているのを聞くとすこーし寂しく悲しくなってきました。(笑)
どうやら女一人で来る所ではなかったようです。でもいいの。
一高生だって雨の中このつづら折の山道を一人登ったのよ。(あれは男だけど。)
そうよ私は一高生。

わさび田を見ながら。 724wasabi.JPG 

もやの奥に人工物が見えてきた時は、正直なところほっとしました。

724amagiaonn.JPG 旧天城トンネル

踊り子ならぬイケメンダンサーくらいいてくれたらどんなにいいだろうと思ったのですが(笑)、1組のファミリーがいたのみ。
往時はここに峠の茶屋がありました。行き交う人々で賑わったことでしょう。
開通から百年余りたった平成のこの日は霧雨にくるまれてしっとりと、深く静かに時が刻まれていました。
踊り子の旅芸人の一行もここで休憩したのだなぁ。
そう思う私の職業も旅芸人であったのでした。

中へ。 724tonnna.JPG

小さな電灯がついているものの中はほの暗く、ひんやりした湿気と土のにおいにつつまれていました。
冷たい石の壁からは水が流れる音が聞こえ、天井からは時折水滴が滴り落ちて。

あとになって「あそこは霊が出る」と聞かされたのですが、そんなの知ったこっちゃありません。(笑)
おかげで私はを心をワイドサイズにして、五感センサーの感度をフルにしてゆっくりここを歩くことができました。

724deguti.JPG 10分ほどで河津側へ。

こちらも青く深い森でした。
気づいたのは、川端作品は「トンネル」がキーポイントになっているものがいくつかあるなぁ、ということ。
トンネルを抜けてこなければ、人間は誕生できません。
また、人間はトンネルを抜けて高いところへ還っていくわけで。
そんな印象をこのトンネルに見出しました。



つづら折の道をしばらく下ってバスに乗り、河津七滝方面に向かいます。
つづく。





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posted by どみ at 23:59| 東京 🌁| Comment(6) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
やっぱり、旅は一人ですよ、一人! (^^;

それにしても、いいですねぇ、こういう旅。
それなりの知識を必要とするのが、私には難しいところですが(^^;
Posted by castle at 2006年07月29日 08:08
うん、あのときの選択肢なら、ここになると思っていました…
ここは憧れを集めるところですね。
遠いけれど、私も一度は行って見たいですね。
Posted by ensemble at 2006年07月29日 12:53
私もfc2というところでBlogをしているのですが、Blogサーファンをしていてこちらに辿り着きました。

楽器を弾ける方への畏敬の念、それにBlogの更新の頻繁さ、および内容の面白さからこのところROMをさせていただいておりましたm(_ _)m。


今回「しろばんば」ということでついついコメントも書いてしまいまた(^^;)

楽しい旅行記有り難うございました。わたし「しろばんば」好きで(いえ、学校の教材で読んだときには耕作君の淡い恋心などに感情移入したりなどして(^^;))、続編の「夏草冬濤(<-題名うろ覚え)」とか、「北の海」なんぞを何度も読んだことを思い出します。

これからもこの素敵なBlogを引き続き拝見させていただけたら、と思っています。

よろしくお願いします。
Posted by みりおじ at 2006年07月29日 19:50
castleさん。
 >やっぱり、旅は一人ですよ、一人!
あぁ、そう言ってくださるとうれしい。
と思いつつ、いつまで一人でいるんだオイ、と自分に自分でソフト(←重要)にツッコミを入れておきます、ハイ。
母親からは既に斬鉄剣のツッコミが入っています。


ensembleさん。
一番良いのは紅葉の季節だそうですよ。お時間があったらぜひ泊まりがけでどうぞ。
私はいそいそと日帰りしたので、なんだか「下見のような旅」になってしまいました。(笑)
次は泊まりで!また一人でか…?!


みりおじさん。
いらっしゃいませ。丁寧なコメントをありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。 <(_ _*)>
「北の海」まで到達されましたかー!同志です!
夏草〜の本は中学の時に持っていましたが、読んだ形跡がありませんでした。茶ばんだだけで。(笑)
最近シロバンビストになった勢いで「北の海」まで読みました。この本だけがまだ白くてきれいな本です。
練習がすべてを決定する柔道、でしたっけね。今度は金沢に行けたらいいなと思っています。

あれ?みりおじさんのurlが見当たりませんよ?(笑)
Posted by どみ at 2006年07月30日 00:55
金沢、そうですね。私も駆け足で兼六園に立ち寄ったぐらいですので一度はじっくりと訪れてみたいな、と思っています。

# 食事も美味しそうだし(笑)


url ・・・ お恥ずかしいBlogだし、urlを入れると、どみさんが来るようにし向けるような気もして敢えて入れませんでした。

では、お言葉に甘えて一応、入れさせていただきます。

それからリンクにも追加させていただいております。不都合があれば削除しますので遠慮無く仰ってくださいね。
Posted by みりおじ at 2006年07月30日 21:15
みりおじさん。
urlを教えてくださいましてありがとうございます。これでお邪魔できますねぇ、うふ。

それとリンク追加ありがとうございます。ありがたいことです。
Posted by どみ at 2006年07月31日 10:39
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