2006年09月02日

彼は再びないた

彼が私の部屋を突然訪ねてきたのは、もう深夜をまわった頃だった。


ドアの向こうで彼はないていた。

私はため息をついた。「もう来ないでって言ったじゃない。」

ドアの隙間からそう言うしかなかった。

彼はなくばかりで何も答えなかった。

「あなたには何もしてあげられない。」

私が言った後も、彼は悲しげにないていた。

そして潤んだ大きな瞳で真っ直ぐに私を見つめるのだった。ヘヤノナカニイレテクレ、と。

そうやっていつもないてばかりいる彼が私は嫌だった。


でも。


本当は、私を訪ねてくれたのがうれしかったのだ。

彼も私も、本当は、孤独なのだ。

ここでさよならを言ったら、もう二度と会えないかもしれない。

そんな甘えが、ドアを少し開けさせた。

彼と私は、しばらく見つめ合っていた。

そして彼は無言で私の部屋に足を入れた。



久しぶりに触れた彼の体は、とてもやわらかかった。

ところが、私の気持ちとは裏腹に、彼は私と目を合わせようとはしなかった。

そして、彼が何を欲しているのか、ついにわかった。

それは、私ではなかったのだ。


私は彼をそっと抱いて、外へ送り出した。



これで良かったのだ。

冷たく乾いた風が秋を告げる、静かな夜のことだった。





ドアの外で彼は不満そうにないた。ニャーと。

nya0902.JPG 私の焼鮭はおまえにはやらん。
もう入れてやらない。


そして、彼は彼ではなかった。彼女だった。
posted by どみ at 23:59| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | つれづれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わははは。笑っちゃう程、切ないです!!(笑)
これもまた最高です!
どみさん、素敵過ぎます。
ツボにハマってます!!(^_^)
Posted by mine at 2006年09月06日 10:50
また、してやられました!

どみさん、ホント文才ありますね。

作家になれるかも(お笑いの(笑))。

失礼いたしましたm(_ _)m
Posted by みりおじ at 2006年09月06日 21:23
僕も鮭もらいに行こうかニャー。
Posted by akisute at 2006年09月06日 23:19
mineさん。
ハイ、切ないですね…。人によく慣れているので飼い猫なのでしょう。
昨日も今日も、ニャーニャーやっていました。
ベランダから登ってくるんですよ。
もう入れてなるものかと無視していると、網戸で爪とぎして私を脅します。困ったニャー。


みりおじさん。
そ、そろそろとらばーゆかなぁ…。(遠い目)


akisuteさん。
そうか、あの時玄関でニャーニャー言ってたのはメス猫の皮をかぶったakisuteさんだったか…。うひょー。


Posted by どみ at 2006年09月07日 01:01
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