2006年10月06日

モーツァルトと量子力学/糸川英夫

モノとカネだけでは人の心は埋められない。心の空白を満たし、人々に満足を与えるのは、科学と芸術と宗教である―。若き日、量子力学に感動して科学の道に進み、美しい音楽に魅了されて今もチェロを奏でつづけるマルチ人間糸川博士が、身の回りのさまざまな出来事から社会現象まで、芸術と科学の両方の視点から縦横無尽に切る、ちょっと辛口のエッセイ集。
(「BOOK」データベースより)


私はモーツァルトを知らない。量子力学も知らない。(知ったかぶりはしている。)
知らないにしてもなぜこんなタイトルが生まれたのか大いに興味が湧いたのだが、その謎は前書きを読んで解決した。

イトカワ先生の言葉をここに記せば、「過去は他人なのである」。
マルチ人間と呼ばれ、多方面ですばらしい業績を残した人ならではの言葉。
その一方で、過去になった他人から新しく学ぶことは多い。
すなわち、当の本人は他人である過去に生きているのも事実なのである。
モーツァルトと量子力学。
このタイトルが過去と今日を結ぶ重要な架け橋になっている。


イトカワ先生はクラシック音楽を愛するチェロ弾きであった。
この本はもう20年以上前に書かれているが、日本社会におけるクラシック音楽界を、昔にしても現在にしても言い得て妙であり、なかなか爽快だ。


ポピュラーや歌謡曲はエンターテインメントだけど、クラシック音楽はエンターテインメントではなく「おべんきょう」するものだ、というフンイキが私には気に入らないのである。

批判より学習、感動より「分かったか分からないか」を考える方が強い。

教育に問題があるのは事実だが、原因はそればかりではないだろう。
「クラシックはどうも分からなくて」「肩が凝って」なんて言わなくていいのである。
それを聞くたびに私はなんだか悲しくなるのだ。
音楽は「分かるか分からないか」で聴くものではない。
本質はもっとシンプルなはずで、音楽は「好きか嫌いか」「感動したかしないか」「おもしろいかおもしろくないのか」、それだけなのである。
人類共通の財宝とはそうあるはずだ。


イトカワ先生、20年前も今も、多くは変わっていません。
でも音楽に垣根を持たない若い人が増えてきていると思うし、私達は未来のファンを育てる努力もしています。


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糸川 英夫

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私が一番好きなイトカワ先生。
http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.217/ISASnews217.html
posted by どみ at 23:59| 東京 🌁| Comment(6) | TrackBack(0) | クラシック音楽の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は、どみさんとある意味逆で、量子力学(をさらに発展させたもの)の研究でご飯を食べています〜。
最近、理科系の勉強が嫌いな子が増えているそうですが、クラシック音楽と同じで、理科系科目も、分かる分からないというより、面白いかどうかなんだと思っています。
この本、紹介してくださって、ありがとうございます。
読んでみよ〜っと。
Posted by そら at 2006年10月14日 00:21
イトカワせんせいのお話は僕には難しすぎるけど、チェロは良いね。あの語るような音色が好き。
Posted by akisute at 2006年10月14日 01:02
音楽を聴いて、分かる分からないと言う人がいるけど
「音楽が分かる」ってどういうことだろうね?
何が分かるんだろう?
心に触れる、感じることが大事なんだよ。
分かる音楽なんか、聴いてもつまんないや。

…などと、本職の音楽家の前で
知ったかぶりを披露してみました。
恥ずかしいね、おやすみなさい。ぐぅ。
Posted by まめたろう at 2006年10月14日 02:11
そらさん。
あーそうだ、「子供の理科離れ」とか聞きますもんねぇ。

 >分かる分からないというより、面白いかどうかなんだと

そうですね。わからんくてもまず面白いと感じたらラッキー。面白くないと感じたなら他の分野で面白いものに出会えればラッキー。(私は楽天家。)

イトカワのダンナが書いたこの本、なかなかおもしろいです。
Vc.のヨーヨーのことを「顔が悪い」なんて書いちゃったり。(笑)


akisuteさん。
あら、「語るような音色」ですって。
一家に一人チェリストがほしいですね。
ヴァイオリニストは甲高くてうるさいしヴィオリストは音がもこもこしてるしバスィストだと楽器がでかくて邪魔だしー。(笑)


まめたろうさん。
おぉ、まめたろうさんが音楽について語ってるぅ!
 >心に触れる、感じることが大事なんだよ。
ハイ、おっしゃるとおりです。
ですが、わたし最近感度がにぶってるような…。(老化だな。)
Posted by どみ at 2006年10月14日 22:08
老化だなんて、まだまだ先の話でしょう(笑)
感度がにぶっているのは、「慣れ」のせいでは?

はるか昔にちょびっとだけ音楽をかじりましたが
未だに音楽を心で感じることはできません(笑)
でもトラック運転中はクラシックやブラス、ジャズなんかの
歌詞のない音楽はとっても便利(^^)
意外と集中できたりするんですよね〜。
Posted by まめたろう at 2006年10月15日 02:06
まめたろうさん。
 >「慣れ」のせいでは?
はい、そのとおりです。そうやって人間は大切なものがだんだん見えなくなってくるのです。うひょう。

私は昔から歌詞の無い音楽をやることが多いので、歌詞がついていても聞いていないことが多いです。(笑)
幼稚園の園歌から高校の校歌まで音楽はばっちり暗譜していますが、歌詞なんてあったっけ〜てな感じ。
Posted by どみ at 2006年10月15日 22:46
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