2006年10月06日

モーツァルトと量子力学/糸川英夫

モノとカネだけでは人の心は埋められない。心の空白を満たし、人々に満足を与えるのは、科学と芸術と宗教である―。若き日、量子力学に感動して科学の道に進み、美しい音楽に魅了されて今もチェロを奏でつづけるマルチ人間糸川博士が、身の回りのさまざまな出来事から社会現象まで、芸術と科学の両方の視点から縦横無尽に切る、ちょっと辛口のエッセイ集。
(「BOOK」データベースより)


私はモーツァルトを知らない。量子力学も知らない。(知ったかぶりはしている。)
知らないにしてもなぜこんなタイトルが生まれたのか大いに興味が湧いたのだが、その謎は前書きを読んで解決した。

イトカワ先生の言葉をここに記せば、「過去は他人なのである」。
マルチ人間と呼ばれ、多方面ですばらしい業績を残した人ならではの言葉。
その一方で、過去になった他人から新しく学ぶことは多い。
すなわち、当の本人は他人である過去に生きているのも事実なのである。
モーツァルトと量子力学。
このタイトルが過去と今日を結ぶ重要な架け橋になっている。


イトカワ先生はクラシック音楽を愛するチェロ弾きであった。
この本はもう20年以上前に書かれているが、日本社会におけるクラシック音楽界を、昔にしても現在にしても言い得て妙であり、なかなか爽快だ。


ポピュラーや歌謡曲はエンターテインメントだけど、クラシック音楽はエンターテインメントではなく「おべんきょう」するものだ、というフンイキが私には気に入らないのである。

批判より学習、感動より「分かったか分からないか」を考える方が強い。

教育に問題があるのは事実だが、原因はそればかりではないだろう。
「クラシックはどうも分からなくて」「肩が凝って」なんて言わなくていいのである。
それを聞くたびに私はなんだか悲しくなるのだ。
音楽は「分かるか分からないか」で聴くものではない。
本質はもっとシンプルなはずで、音楽は「好きか嫌いか」「感動したかしないか」「おもしろいかおもしろくないのか」、それだけなのである。
人類共通の財宝とはそうあるはずだ。


イトカワ先生、20年前も今も、多くは変わっていません。
でも音楽に垣根を持たない若い人が増えてきていると思うし、私達は未来のファンを育てる努力もしています。


モーツァルトと量子力学モーツァルトと量子力学
糸川 英夫

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私が一番好きなイトカワ先生。
http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.217/ISASnews217.html
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2006年04月08日

オーケストラ楽器別人間学/茂木大輔

あなたの運命は楽器が決めていた!まさかと思ったホルン奏者のあなたは山奥育ちですね。ファゴットを始めたあなたは、最近お人好しになってませんか。友情に篤い人にはトランペットがお勧めで、某首相にはバス・クラリネットがお似合い。これはすべて科学的?な結論です。楽器と人の関係を人気オケマンが、爆笑的に論じる禁断の音楽書。あなたが演奏すべき楽器が、これで決まる。


この本を読んで「楽隊になろう!」と人生を決めてしまった人がいる。わたしである。
それくらいこの本はすごい。とにかくすごい。私はこの本に自分の居場所を見つけてしまったのである。
学生の頃から繰り返し読んでいるが、電車の中では読めない。腹筋がよじれてしまうのだ。

どんなヒトがどんな楽器を選ぶのかの「楽器選択運命論」、いかなる楽器がいかなる性格をつくるのかの「楽器別人格形成論」…というと何やらムズカシゲだが、プロ、アマ問わず「オケ・プレーヤーなら漠然と気づいている楽器と人間との不思議な関連性」(本文より)がおもしろおかしく、しかし真実がすぱぱぱぱんと書かれている。
誰かが書きそうで誰も書かなかった事を、作者は本にしてしまった。
楽器に縁のない人ほど、読んでほしい。(笑)
のだめカンタービレに出てくるキャラがなぜああなのか、この本に答えはある。

私自身、自分の性格と自分が演奏する楽器との関連性を、この本の中にはっきりと見出している。「あ、だから私の性格ってこうなんだ、やっぱりねぇ」と。
読み進むたびに音大の同級生や仕事仲間の顔も浮かんできて、また笑わせられる。


楽器別デートマニュアルや、楽器の組み合わせによる良い宴会・悪い宴会論も。(笑)
一番笑ったのは“楽隊文化祭”。
“フルート組”“トランペット組”“ヴァイオリン組”など各楽器プレーヤが集まったクラスが文化祭で展示・模擬店をやるならどんなことをしでかすのか。

ヴィオラ組→模擬店ほのぼのマッサージサロン
    ベッドを教室に配したなごみの場所です。
    なお、マッサージはお客様同士でお願いします。
    店員でベッドがふさがっているときはご容赦ください。(*´Д`);∵ぶっ


オーケストラ楽器別人間学
オーケストラ楽器別人間学茂木 大輔

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stars漫画も大人気!
stars演奏家はもちろん、そうでない人も
starsクラシック音楽は面白い!
starsありそうでなかった、楽団員必携の書
stars茂木節炸裂!!彼の観察力に誰もがうなずき笑う!

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楽器別適性判別テスト(管打楽器)をやってみたら、私に向いている楽器はファゴットであった。……よし、転職するか!(つーか、なんで弦がないね?)
実は私、高校で吹奏楽部に入部した妹に迷わずファゴットを薦めた前科があるので、やっぱりこの結果はあなどれない。
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2006年02月04日

山の上の交響楽/中井紀夫

  三ヶ月先に難所が迫っていた。
  難所中の難所だと、楽団員たちは囁きあっている。
  神業に等しい超絶技巧を要求されるので、バイオリニストは発狂してしまう。
  ピアニストは指が蝶結びになってしまう。
  管楽器奏者は狼男になってしまう。その他その他、その種の話には事欠かない。
  八百人楽章。
  難所はそう呼ばれていた。



こんな出だしのSF短編小説。すごいでしょ。
東小路耕次郎が書き残したこの交響曲、すべての楽章を演奏するのに1万年もかかるそうで。
8つのオケと指揮者が毎日24時間かわるがわる一度も途切れることなく演奏し続けて、やっと200年が過ぎたところなのです。
これから迎える八百人楽章とは、その名の通りすべてのオケの楽団員が必要とされる楽章。
だから練習もゲネプロもできない。ぶっつけ本番。
それなのに、次々と難題が押し寄せる。事務局も楽団員も楽器製作職人もてんてこ舞い。

奇想天外で壮大な設定にあれあれとたじろぎつつも、楽団員各々のキャラクターが豊かでどこかリアリティーが感じられる。(笑)
物語にすーっと入って、あっという間に読んでしまった。 
1988年星雲賞受賞作品、他5編。

山の上の交響楽
山の上の交響楽中井 紀夫

おすすめ平均
starsSFの形をした作品論
stars柔らかな不思議世界

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作曲家の皆様、お願いだからマネしようと思わないでください。。。
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2006年01月10日

癒しの楽器 パイプオルガンと政治/草野厚

東京芸術劇場大ホールの舞台後方には、2台で3タイプ(ルネサンス・バロック・モダン)の音を持つ回転式のパイプオルガンがある。
世界初というこの回転式、背中合わせになった2台のオルガンがコンピュータ制御によって忍者屋敷の回転扉のようにぐるりとまわるのだ。重さは約70dだそうで。

ある時ゲネプロのために私が舞台に出ていくと、このオルガンがなんと横を向いたままになっているではないか。
どうやら楽器を載せている回転盤が回転途中でストップしてそのまま動かなくなってしまったらしい。
その脇でスタッフらしき数人が上を見上げたりオルガンに手をかけたりして、何やら話している。
なぜそのような珍事が起きたのかは、その後この本を読んで納得した。
そしてそれは珍事ではなかったようだ。



バブル期、多くの地方自治体がパイプオルガンを導入した。
いま、その多くは「宝の持ち腐れ」である。特権的な一部の演奏家しか利用できなかったり、故障だらけで法外なメンテナンス費用が毎年かかったり、税金で買ったことを十分に認識していないとしか思えないケースがたくさんある。
そして、オルガンの機種選定や音楽ホールの運営委託に於いても、国立大学教員などによる不明朗な動きが数々見られる。
クラシック音楽の世界も腐敗と無縁ではないのだ。
(表紙カバーの返しより)


筆者は公共政策や政策決定論を専門とする大学教授。
そして忘れてならないのは、筆者がオルガン愛好家であるということ。
パイプオルガンという意外な視点から文化行政、学閥や演奏家団体などの排他的かつ閉鎖的な組織の問題点を洗い出し、現在の日本のメジャーな問題点へと結びつけた。
著名な音楽家・演奏家らの実名を「グレー」として挙げているのも、この筆者でなければできなかったことであろう。
誘導的とも思える記述は多数見られるが。


本書のもう一つの狙いは、一般の人がほとんど触ったことのない楽器をより身近なものにしようというものである。
これまでのオルガン普及活動が専門家を中心に上から行われてきたとすれば、本書はゲリラ的な下からの運動の一つである。
 (あとがきより)

その“ゲリラ的な下からの運動”が良い方法であるとはあまり思えないのだが(笑)、
オルガン愛好家である筆者の「公共のオルガンはもっと活用されるべきだ、誰でも触れるべきだ」という思いには強く共感した。
プロの奏者によるバッハやフランクなどのクラシックだけがオルガンではないのだ。
地域のオルガンスクールの発展を願う。

癒しの楽器 パイプオルガンと政治癒しの楽器 パイプオルガンと政治
草野 厚

文藝春秋 2003-01
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後味の良い本ではないが、私がパイプオルガンを益々好きになったことは確か。
読んで良かった。
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2005年12月26日

モルト・カンタービレ/堀米ゆず子

音楽のこと、家族のこと、ブリュッセルのこと…世界で活躍するヴァイオリニストが綴る、音楽人生"思いっきり歌って"。堀米ゆず子、初の書き下ろしエッセイ。(「BOOK」データベースより)

エリザベートコンクールの様子が興味深かった。(笑)
本選期間、ファイナリスト達は森の奥深くにあるチャペルに“幽閉”されるのです。
電話なし、テレビなし、友達なし、外出一切禁止の個室で、新作のヴァイオリン協奏曲を含む本選の曲目を一人で練習しなければならない、と。
なんだか火曜サスペンス劇場の舞台としては傑作だけど、本当にそういう伝統が続いてきたというからスゴイ…。
ファイナリスト達の雰囲気はとげとげのコチコチかと言うとそうではないようで。
ここまで勝ち抜いてきたという共通の戦友意識があり、食事時などかなりにぎやかな国際交流になっているということでした。
作者はこの1980年エリザベート王妃国際音楽コンクールで見事優勝します。

難関のコンクール優勝、デビュー、ソリストとして世界を股にかけての仕事、結婚、出産、子育て。
ひとりの女性の歩み方をじっくり読みました。
口語に近い言葉遣いで書かれているので、とても読みやすく親しみが持てます。楽しく読める本です。

モルト・カンタービレ―ブリュッセルの森の戸口からモルト・カンタービレ―ブリュッセルの森の戸口から
堀米 ゆず子

NTT出版 1995-11
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ちなみに妹さんは“もも子さん”。
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2005年10月20日

母と神童―五嶋節物語/奥田 昭則

世界的天才バイオリニスト五嶋みどりと龍を産み、育てた母・節の夢と波瀾に富んだ半生記。若き日にバイオリニストをめざしながらも挫折した節は、娘のみどりにその夢を託して渡米。母娘で厳しい試練に耐えやがてみどりの才能は開花する。その間、夫と離婚。やがて新たな伴侶を得て、龍が誕生。龍もまた、節の教育により、バイオリニストの道を歩み始めた……。華やかな成功の影に秘められた喜びと苦悩。世代を超えて共感を呼んだ感動の記録、待望の文庫化。(出版社/著者からの内容紹介)

“五嶋節(ごとう・せつ)”と聞いて、その姿を思い浮かべられる人はどれくらいおられるだろうか。
あのみどりさんと龍くんにヴァイオリンを仕込んだ、モーレツ・ステージママである。

この本で一番記憶に残った一節。
「音楽はみどりにとって喜びの源泉だが、同時に苦しみの元凶にもなっているのだろう。節もみどり自身もそれを自覚していた。」
みどりさんが拒食症で入院した頃の一場面である。
小学校の国語の授業で“音を楽しむ”と書いて音楽です、なんて教わったものだが、天才少女には通用しない。(私は“音が苦”でオンガクだ、と教わったが。あぁ。笑)
音楽に近づこうとすればするほど、それが重荷になる。ストレスを感じる。職業音楽家・音楽愛好家を問わず、そのように感じたことのある方は多いのではないか。
もしそれが、ヴァイオリン以外何もできない女の子だったらどうだろう。
まだ自立していない女の子が、母親という精神的支えを得られなかったらどうだろう。

拒食症を克服するきっかけの一つとなったのが、子供向けにレクチャー・コンサートを開く非営利組織「みどり教育財団」のボランティア活動だった。
このことはマスコミでも報道されたものだが、この本にはテレビや雑誌からは窺い知れない、天才少女から大人の女性へと自立する過程が鮮やかに、そして堅実に描かれている。
苦しみから抜け出し、立ち直る。そして親離れと子離れ。
節とみどりの成長を、興味深く読んだ。

“ヴァイオリンは自分でやりたいと言って始めたことではないが、財団を設立したことはまったく自分のアイディアで始めた。だから誇りに思っている。”というみどりさんの言葉が素敵。


4094080015母と神童―五嶋節物語
奥田 昭則

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五嶋龍くん出演の、JR東日本のCM、あれいいよなぁ。
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2005年10月02日

四重奏ゲーム/吉住渉

天才ヴァイオリニスト・伊集院英至の母校訪問に合わせ、音大付属中3年の友成笑・的場類・樫本孝純・安東妙子の4人は校長と神田先生に弦楽四重奏をやるよう言われる。最初は全く気が合わない4人。そんな中、ある事件が起こり…?(出版社/著者からの内容紹介)


昭和63年(1988年)少女コミック誌「りぼん」に掲載された、「女の子のためのおもしろい推理まんが」。タイトルが気になってブックオフで立ち読みしたら、結構笑えた。
話の流れは単純&強引でツッコミどころ満載なのだが、キャラ設定がなかなかおもしろい。

1st.Vn.(笑・えみ)元気いっぱい明るさいっぱいの人気者
2nd.Vn.(孝純) 校内きってのプレイボーイ
Va.   (妙子) 紅いピアスのツッパリ美少女(高校生不良グループと親交あり)
Vc.   (類)  常に成績トップの超秀才


そうそう、1st.ヴァイオリンは確かにこんな子がいいかも。戦隊モノなら絶対赤レンジャー。主役だし。
プレイボーイはチェロに多いけれど(ほら、菊池くんとかよ)、ヴァイオリンなら2nd.をお願いしたい。1st.だと、本番にプレイボーイぶりを発揮すべく暴走する危険がありそうなので。レンジャー該当なし。
ウケるのがヴィオラ。ツッパリなんて最近聞かないけど(笑)!そんなのがヴィオラにいてもおかしくない。暗い過去に生きてる部分があるわけ。だから緑レンジャー
チェロの正道と言えば、秀才・美形・クールで、おうちは金持ちで青レンジャー。プレイボーイの2nd.Vn.とは絶対にウマが合わないわけ。(ちなみにチェロの王道は秀才・美形・プレイボーイ。)

エンディングは四重奏内でカップル誕生というあたり、さすが少女マンガ♪

408853462X四重奏ゲーム
吉住 渉

集英社 1988-10
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制服のスカート丈(長い…)、わさっとしたヘアスタイルなんかが80年代を感じさせます。
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2005年09月22日

どこか古典派(クラシック)/中村紘子

もし、世界一うまいカレーを作る人は誰かを決めるコンクール(国際カレー調理コンクールとでも言おうか)があったら、この方が作るカレーは間違いなく第一位特賞に輝くだろう。
あ、でも参加者として出場するわけないか。やっぱり審査員か。

日本を代表する現役ピアニストは中学3年で彗星のごとくデビューし、それ以来ずっとトップランナーだ。
国際コンクール審査員やコンクールそのものを育てることにも力を注いでおられる。
よくコンサート会場入り口で配られるチラシセットには必ず紘子さんの演奏会のものが入っているし、私が初めて親に買ってもらったピアノ曲は紘子さんの演奏だった。(そのカセットテープは今も大切にしている。伸びちゃっても。)

その魅力は、文章においても然り。
この本のオビには「言葉で奏でるとびきりの名演奏」とある。
演奏会やレコーディングのこと、友人のこと、日本と海外の文化のこと、愛犬・愛猫のことなど、この方ならではのエッセイ集。
その文章は柔軟だったり、時には強靭だったり、くすりと笑わせてチクリとやったりと、たくさんの魅力が様々な角度から見えてくるのだ。
それに視野の広さ、交遊関係の広さには驚く。

96年に東京都が文化施設(コンサートホール等)使用料の大幅値上げ案を提示した時は「値上げを許さない会」実行委員長として、読売新聞上で青島都知事や都議会相手に意見を述べている(本書収録)。
その骨太でゆるぎない文章に敬服して、当時その記事を切り抜いてしまった。

あとがきにはこうお書きになっている。
「思い切り自由きままに書いたつもりだったけれど、…(略)…まとめて眺めると結局はピアニストの領分を出ていないことに気づいておかしくなる。」


文武両道のスーパーレディである。

412204104Xどこか古典派(クラシック)
中村 紘子

中央公論新社 2002-10
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カレー食べたいなぁ。

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2005年08月23日

紅いタキシード/山本直純

岩城宏之の「森のうた」を読んだら、相棒が書いた本も読みたくなるわけで。
波乱万丈の音楽人生が、豊富なエピソードと共に綴られた自伝的エッセイ。

私の母はよく「大きいことはいいことだ」と言いながら、小学生だった私にワンサイズ大きな洋服を買ったり作ったりしていた。
だから「大きいことはいいことだ」は母の口癖とばかり思っていたのだ、この本を読むまでは!
クラシック音楽にちっとも興味のない母でさえこの名言を口にするところに、直純さんがどんな仕事をしてきたかがわかるようだ。

「お前は世界の頂点をめざせ。俺は日本で底辺を広げる」
若き頃小澤征爾にこう語ったことは、小澤氏の本「ボクの音楽武者修行」にも書かれている。
直純さんはまさに、それを地で行った人だと思う。
急成長を遂げていたテレビ・メディアの流れを作曲・指揮で牽引した仕事人。
テレビ番組にも多数出演して、クラシック音楽の大衆化に力を注いだ音楽家。
「オーケストラがやってきた」、見たかったな。

「森のうた」を日本の近代オーケストラ史とするなら、この本はそこに放送史、映画史をも巻き込んだ一大メディア史になりそうだ。(劇伴音楽、なんて時代ですよ!)
「男はつらいよ」「いちねんせいになったら」「小沢昭一の小沢昭一的こころ」音楽はみーんな直純さん発だったのだ。
しかし私は、「山本直純作曲」として世に知られているのはほんの一部で、実際ゴーストライター的な作品や師匠のカバン持ちとしての“隠れ作品”もたくさんあるに違いないと思っている。
直純さんが高い所から「実はあの曲、オレ書いたんだよ」と言いたくてうずうずしているかもしれない。(逆に、あれはオレ書いたんじゃねぇよ、というのもあるだろな。笑)
4487795265紅いタキシード
山本 直純

東京書籍 1999-12
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オケのベテラン奏者が「昔ナオズミがね…」と、そのおもしろおかしい天衣無縫な振る舞いを話してくれたことがある。いい話ばかりではなかったのが直純さんらしいところかな。(笑)
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2005年08月09日

カザルスへの旅/伊勢英子

絵描きでアマチュアチェリスト、伊勢英子さんのエッセイ。(ご本人はカザルスの孫弟子にあたるそう。)
スケッチブックを片手に、自分探しの手作りの旅の記録です。
平和と愛のためにしか弓を持たなかったカザルスの足跡を、スペインに訪ねる旅。
自分が何なのか見つけたいと、大学院を休学して誰からも援助を受けずに一人でパリに暮らす話。
“セロ”弾きだった宮沢賢治の心の修羅に惹かれ、東北へ。
生まれ育った北国の原風景、“はこだて幻想”。

私は安定ということばを嫌う。 −(略)− 常に何かと戦っている状態というのが、自分にとって最も好ましい状態であった。欲しいものを全て手に入れた状態−それが目に見えるものであればあるほど−というのは、私には耐えがたい状態であった。(本文より引用)

これは今の私に、欠如している感情だと思います。(笑)
常に追求することが必要な「芸術」に携わる者には、常に自分を追い込む状態、そしてそれを過度のストレスとしない心の在り方が必要かと。スポーツにおいても然り。
だからこそ、この本は私には必要。気持ちにアイロンをかけるような、とても大切な本です。

4122028701カザルスへの旅
伊勢 英子

中央公論社 1997-05
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ご自身が書かれた繊細なタッチの挿絵が、文章に優しく寄り添っています。

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2005年07月20日

森のうた/岩城宏之

小澤征爾著「ボクの音楽武者修行」の再読に続いて、岩城宏之著「森のうた」を再読。
小澤氏も岩城氏も同世代の指揮者。この二人の青春記を読み比べてみるのもおもしろい。岩城氏の舞台はお江戸・古き良き時代の東京芸大だ。

故・山本直純氏とのドタバタがとにかくすごい。エネルギーがハンパじゃないのだ。
棒を振りたいばっかりに2人で学生オケを作ってしまったり、マルティノン×N響の演奏を聞きたいばっかりに楽屋口を突破し山台にもぐりこんでタダ聴きしてしまったり、恋にケンカにイタズラに、もう笑いっぱなし。(映像化されたら絶対おもしろいと思うんだけど。)
そこに近衛秀麿、渡辺暁雄、斎藤秀雄、延命千之助なんて出てくれば、この本がそのまま日本の近代オーケストラ史になるのだ。
話の最後は、ショスタコーヴィッチのオラトリオ「森の歌」。
山本直純指揮×学生オケで演奏し打楽器奏者として出演していた岩城氏が、最後のフォルテシシモ(fff)の入魂の一発でシンバルを豪快に叩き割るところで幕は降りる。

実は私がこの本を初めて読み終わった頃、偶然にもこの「森の歌」を演奏するチャンスが巡ってきた。
この曲は通常のオーケストラよりも編成が格段に大きい。(金管バンダ有り、男声ソリスト有り、混声合唱有り、児童合唱有り。)
ショスタコの名曲であるものの、でかさ故、滅多に演奏されないのだ。一生に一回モノと言ってもいいかもしれない。本当にラッキィだったなぁ。
本番は、フィナーレの最後のフォルテシシモでシンバルは割れず、轟音をたてて転がることもなく無事終わりました。(笑)

4062737620森のうた―山本直純との芸大青春記
岩城 宏之

講談社 2003-06
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神田神保町の古賀書店は、まだ存在するのかなぁ。(音楽専門の古書店なのです。)
岩城氏が学生時代にスコアを買いに行ったというのだから、相当歴史のあるお店よね。私は7〜8年前に行ったきりだなぁ。ベト7と田園のスコアを合わせて700円で買いました。
posted by どみ at 23:59| 埼玉 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | クラシック音楽の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月10日

ボクの音楽武者修行/小澤征爾

バレエな日々のchimiさんの記事を拝見して、この本を思い出しました。

オーケストラに携わったことのある人なら、一度は読んだことがあるかもしれません。
それでなくても、この本は大ロングセラーですよね。
音楽家が書いた本がこれだけ長期に渡って売れ続けているのがすごい。(1961年、26歳で書かれたようです!)今夏も「新潮文庫の100冊」の1冊に挙げられたようです。

日本人が海外に出ることが困難だった時代に、当たって砕けろ式で(砕けてないか…?)海外のコンクールに飛び込んだ、みずみずしい青春エッセイ。(この辺り「のだめカンタービレ」の千秋真一くんとすこし重なる。うふふ。)
この本にはオジャワが当時を「どう生きたか」しか書かれていません。
でもそれだけでいいんです。その若さやエネルギーが私達の心を熱くさせるには充分。
それに私達は様々な方法で「彼が今をどう生きているか」を容易に知ることができる。すばらしいじゃありませんか。

初めて読んだのは高校生の頃で、当時放送されたサイトウ・キネンに密着したドキュメンタリー番組とリンクさせながら夢中になった思い出があります。
音楽でゴハンを食うことに憧れていたあの頃の私も、今じゃ本の中のオジャワより年上になってしまいました。

私が好きな「オジャワ」は、JR錦糸町駅の券売機でタッチパネルと頭上の運賃表をかわるがわるご覧になりながら、小銭を握ったままアタマに?マークを並べて立っておられたオジャワ。(マエストロの後ろは行列。しかし後ろ姿を世界のオジャワと気づいた人はいなかったのでは。。。)
電車に乗り慣れておられないご様子でしたが、あのマエストロもJR総武線に乗ることがあるんだぁ!と知って嬉しくなりましたワタシ。

4101228019ボクの音楽武者修行
小澤 征爾

新潮社 2000
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「せいじ」を変換すると「征爾」がちゃんと出てくるのがすごい。こんな難しい字なのにね。
posted by どみ at 23:59| 埼玉 🌁| Comment(2) | TrackBack(4) | クラシック音楽の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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